ピロリ菌除菌治療
2025.07.01
ピロリ菌に感染するとどうなるのですか?
ピロリ菌に感染すると胃粘膜に慢性の炎症を起こします。
胃粘膜の慢性炎症が胃の発がんに大きく関与するといわれており、ピロリ菌感染によって胃がんリスクは5倍になるという報告もあります。
その他ピロリ菌感染が関与する疾患は
・胃MALTリンパ腫
・胃潰瘍
・十二指腸潰瘍
・免疫性(特発性)血小板減少性紫斑病
等があります。
ピロリ菌の感染率と感染経路は何ですか?
ピロリ菌はかつて全世代で50%以上の感染率となっていましたが、
近年では若年層での感染率の低下が著しく、40代で20%台、30代で10%台、10代以下では10%未満といわれています。
世界的にみると日本を含む東アジアはピロリ菌感染率が高く、さらに病原性の高いCagA遺伝子を持ったピロリ菌の割合が高く、そのため世界的に胃がんの発症が非常に多い地域と言われてきました。
ピロリ菌の感染経路は経口感染と考えられており、ほとんどが乳幼児期(5歳くらいまで)に感染が成立すると言われています。
上下水道の整備と感染率低下との関連が指摘されており、水系感染が主な感染経路と考えられていますが、その他、母子感染、父子感染等の家族内感染も感染経路と言われています。
ピロリ菌の感染診断は?
ピロリ菌の感染診断には主に以下の検査方法があります。
- 尿素呼気試験
- 便中抗原測定
- 血清ピロリ菌抗体検査
- 病理組織学的検査(鏡検法)
- 迅速ウレアーゼ検査
- 尿中ピロリ菌抗体検査
- 胃液を用いた核酸増幅法
この中で広くピロリ菌診断に用いられている検査は
- 尿素呼気試験、2.便中抗原測定、3.血清ピロリ菌抗体検査、5.迅速ウレアーゼ検査
です。
そのうち尿素呼気試験と迅速ウレアーゼ検査は、逆流性食道炎や胃、十二指腸潰瘍の治療で広く用いられているお薬(プロトンポンプ阻害薬やカリウムイオン競合型アシッドブロッカーと呼ばれている薬)の影響を受けるので2週間ほど休薬する必要があります。
血清ピロリ菌抗体検査は単独ではピロリ菌の現感染の診断が確定できない場合があり、他の検査との併用が必要になります。
ピロリ菌の除菌治療は?
ピロリ菌感染が確定した場合は除菌治療が必要になります。
除菌治療にはまず最初に行う1次除菌治療と1次除菌治療が不成功だったり、1次除菌薬の中にアレルギーがある方の場合に行う2次除菌治療があります。
いずれもプロトンポンプ阻害薬(PPI)またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカーと抗生剤2種類の組み合わせを服用(1週間)していただく治療になります。
お勧めはカリウムイオン競合型アシッドブロッカーと抗生剤2種類の組み合わせのパック製剤です。
1次除菌治療の薬の中には他の薬との併用に注意が必要だったり、併用禁忌の場合がありますので、常用されている薬がある場合は担当医や薬をもらう薬局の薬剤師に併用して大丈夫か確認が必要です。
また除菌治療に伴う副作用として下痢、腹痛、味覚異常、皮疹、口内炎、舌炎、出血性腸炎等がありますので、除菌治療中に体調の悪化があれば担当医や薬剤師に御相談下さい。
ピロリ菌除菌後の経過は?
ピロリ菌の除菌は胃がんの発生リスクをある程度抑制させることができると言われていますが、除菌後に胃がんが発見されるケースもしばしばみられます。
当院で最近発見される胃がん症例のうち、多くがピロリ菌除菌後に発見されています。
ピロリ菌除菌後の定期検査の重要さを示しています。
ピロリ菌を除菌したことで安心してしまい、胃の定期検査を怠ってしまっては絶対にいけません。除菌後もきちんと内視鏡で胃の定期検査を受けることで胃がんが発生しても早期で発見できて完治できる可能性が高くなります。
除菌後も内視鏡検査での胃の定期検査を必ず受けましょう。
検査間隔は慢性胃炎(萎縮性胃炎)が広範囲にみられる方の場合は1年、そうでない方でも2年未満で定期検査を受けることをお勧めします。
当院には専門医副院長 大家 昌源( おおや しょうげん)がいますので受診希望の方はお問い合わせ下さい。
[ 健康図書館一覧へもどる ]